水中ドローン FIFISH E-MASTER NAVI による河川橋梁の洗堀調査・河床マッピングの事例紹介
こんにちは。水中ドローン担当の森上です。今回は先日実施された水中ドローンを使った河川橋梁の洗掘調査について、ご紹介いたします。

プロジェクト概要
2025年2月、株式会社旭テクノロジー様とCFD販売株式会社、セキドは、橋梁点検の専門家である日本インフラマネジメント株式会社様による岡山県倉敷市での水中ドローン導入実演会と、実際の洗堀調査の現場に立ち合いました。
洗掘調査と河床マッピング
今回、建設コンサルタントの日本インフラマネジメント様が行った調査は、QYSEA社製の水中ドローン「FIFISH E-MASTER NAVI」を用いて、同県内の 2基の河川橋梁の洗掘調査と上下流各500m の河床マッピングという内容でした。プロジェクトでは、橋脚周辺の河床侵食状況の定量化と3 次元地形モデルの作成、および将来的な氾濫リスク評価を主な目標としています。
水中ドローンの高解像度計測能力によって実現した、日本で初めての水中ドローンによる洗堀調査の実施となりました。従来の潜水士が調査する手法と比べてより効率よく、密度のあるデータを収集し、工期もかなり短縮されました。特に、水中ドローンの水深測定機能からマッピングデータを形成する点は、日本インフラマネジメント様としても「画期的」と評価する結果となりました。



[従来の課題]潜水士に依存した調査の限界
河川橋梁の橋脚基礎は、恒常的な流水作用と降雨時の増水による河床の洗掘・侵食リスクに晒されており、基礎地盤の劣化を早期発見するため、河床高さの計測と経年変化の分析が必須となっています。従来の河床調査では、「レットロープ測定」が主流であり、橋上から重錘付きロープを垂下して河床高を計測する手法が採用されてきました。しかし、この方法には複数の課題が存在しました。
1. 安全性
河川は季節風による急流が多く、潜水士の作業中に暗流に巻き込まれるリスクが高まります。
2. 作業効率
単一橋梁の検測に 3~5 日を要し、河床マッピングでは人工による分段布点測量が必要となります。複雑な水流環境下では潜水士の動作が制限されます。
3. データ精度
潜水士による目視検査は水中視認性が平均 2~3m に留まるため、5mm 以下の微細亀裂を見逃すリスクがあります。
4. コスト
各調査プロジェクトでは潜水保障船と救命チームを必須配置とし、単一案件の人件費が高い。特に長期間に及ぶ調査では設備維持費と人員配置費用が累積し、収益性を圧迫します。
5. スケジュール管理
働き方改革により、潜水士のスケジュールが非常にタイトになっており、天候等で調査が順延となった場合、数週間先になることがあった。また、再調査も同様の理由によりすぐに実施できないといった問題があります。
これらの課題は、測定精度の信頼性確保と作業者の安全確保、さらには事業コストの観点からも根本的な解決が求められていました。
水中ドローンの導入効果
FIFISH E-MASTERNAVI の活用により、河川橋梁の洗掘調査と河床マッピングにおいて、従来手法を大きく上回る効率性と安全性を実現しました。特に、ドローン搭載のソナーを用いて、マッピングデータを取得し、自動生成される等高線・3Dマップ、断面図は、現場での迅速な分析とレポート作成を可能にし、単一橋梁の調査時間を従来の 作業より大幅に短縮しました。
マッピング
水中ドローンにスタンダード搭載されている合計8個のソナーによる深浅測量を実施することで、短時間でマッピングデータを作成し、洗堀調査をすることが可能になりました。



AI点検・測量
リスク特定した橋脚に対して水中ドローンを用いて撮影し、撮影した部分を測量し、リアルタイムで問題特定可能です。


水中ドローンナビゲーション機能で自動走行
橋梁上流、下流の調査をする際に、自動走行機能を用いて、オペレーター操縦なしでも深浅測量が可能に。作業時間を従来の数日から半日未満に短縮。

水中ドローンによる洗掘調査の効果
今回の調査を終えて、日本インフラマネジメントのご担当者様からコメントを伺いました。
「FIFISH E-MASTERNAVI は、旧来の調査と比べると、はるかに効率的かつ安全に業務を実施することができるようになりました。洗堀調査には他の最新機器も導入検討されていますが、あまりにもコストが高くなかなか十分な調査ができませんでしたが、この性能でこのコストパフォーマンスというのは素晴らしい機体だと思います。
また、今までは深浅測量時に近接目視点検を兼ねるということは難しく、別日に潜水士による調査を実施したりしていました。この機体では深浅測量と同時に近接目視点検+AI点検ができるので、再調査等の手間がなくなりそうです。」
今回使用した製品
QYSEA FIFISH E-MASTER NAVI
複雑な水中環境での高精度な測定、検査、調査を可能にする最新型水中ドローンです、特に橋梁点検、下水道管や水路の点検において、その性能を最大限に発揮します。
レーザースケーラーやAR測定ツールを標準搭載で、小型でありながら、パワーフルーで、迅速に現場対応が可能の最先端ソリューションになります。
・ナビゲーション機能
[ U-INS 水中自動ナビゲーション ]
水中測位システムスタンダード搭載、リアルタイム位置の自動航行、POIレコーディング、自動帰航、ルート計画を提供します。
また追加オプション搭載で、高精度RTK測量など、さまざまな水中測位ソリューションを提案します。

・マッピング機能
[ QY-BT 2D&3D海底マッピング ]
FIFISH E-MASTERにはQY-BT(水深測定ツール)が搭載されています。
FIFISHが開発したインテリジェント水深測定アルゴリズムとQ-DVL、GPSを基に、自動航行が可能となり、高精度の水中測位と3Dマッピングが実現します。

・測量機能
[ QY-MT AI測定 ]
FIFISH E-MASTERは、AR測量機能を標準搭載しており、拡張現実技術(AR)とレーザースケーリング技術を活用して、水中の物体のサイズを高精度かつ簡単に測定します。

・ホバリング機能
[ Q-DVL ステーションロック ]
FIFISH E-MASTERは、Q-DVLホバリングシステムを標準搭載しており、水中でドローンの位置をロックし、水中作業環境からの干渉に対して正確にホバリングが可能です。

詳細やお見積り、お問い合わせはこちらQYSEA FIFISH E-MASTER NAVI【賠償責任保険付】
FIFISH E-MASTER NAVI の展開
2024 年10月の E-MASTER NAVI 発売以来、橋梁点検やインフラ点検、配管点検のほか、漁業、外洋調査、風力発電、研究開発を含め、たくさんのお客様が導入されています。今後もさらに多くの分野で水中ドローンが活躍できると考えられます。今回の事例紹介で水中ドローンにご興味をお持ちいただいた方や、すでにご検討中で効果や運用などに不安をお持ちで踏み切れない方は、ぜひお気軽にご相談ください。
セキドでは、水中ドローンの機動性や操作性、成果物が確認できる実機を使った実演会も定期開催しています。具体的な導入検討や課題をお持ちの方はもちろん、まずは水中ドローンの動きを見てみたいと行った方まで、ご参加をお待ちしております。