産業用フラッグシップドローン「DJI MATRICE 400」登場!飛行性能も安全性能も大幅アップグレード
こんにちは、DJI産業用ドローン担当の奥です。2025年6月10日、ついに産業用フラッグシップドローンの最新機種「DJI MATRICE 400(マトリス 400、以下「M400」)」が発表されました。
DJI Matrice 350 RTK(以下「M350 RTK」) からの正統進化でありながら、飛行性能・安全性・拡張性のすべてが強化されたこのモデルについて、どこよりも早く詳細に迫るレビューをお伝えします。

ー もくじ ー
・外観からわかる進化
・より進化した飛行性能と安全性
・気になる新機能のご紹介
・まとめ
外観からわかる Matrice 400 の進化
機体形状
M400 は前進時の空力効率を意識したやや斜めの姿勢をとる構造になりました。これは飛行中に前進する際の安定性・飛行効率を高めるためです。また、プロペラは M350 RTK と比較して大きくなり、より揚力を得られため、トルクが下がり消費電力を抑えています。
また、M400 は M350 RTK から継続して IP55の保護等級(防塵防滴)を備えているため、様々な過酷な環境でも飛行が可能です。

機体サイズとキャリングケース
M350 RTK と比較してややサイズアップしていますが、目測1.1~1.2倍ぐらいでしょうか。格納するキャリングケースも M350 RTK 版の高さはそのままに、厚みがアップしています。


上部LiDARセンサー✕高性能CSMレーダー✕ビジョンセンサーの搭載
M400 は産業用ドローン “初” となる、ミリ波レーダー✕LiDARセンサー✕ビジョンセンサーの3種類の障害物センサーが搭載されています。
機体上部にある半球型のものが、Lidar障害物センサーとなり、水平360度の検知を行います。これにより光のない暗い環境や細かい枝、電線など1.2mm以上の物体などが検出ができます。測定範囲は概ね0.5m~100m、35m先からの電線(21.6mm)の検出ができるスペックとなっています。

次に高性能なCSMレーダーは6方向に搭載されており、LiDARセンサーで対応しきれない範囲をカバーしています。こちらも電線検出距離は36m(12.5mmの電線)、50m(21.6mmの電線)といったものになっています。

最後に全方位のビジョンセンサーですが、こちらは「フルカラー低照度魚眼カメラ」となっています。今までは白黒での表示であった従来のビジョンセンサーと比べて、フルカラーであることでより障害物の識別を行えるようになっています。
TB100インテリジェントフライトバッテリー
M400からは差し込むバッテリーが1つになりました。これは機体に内部コンデンサが搭載されたことにより、最大45秒の電源の維持できるようになったため、引き続きホットスワップ機能(電源を落とさずにバッテリー交換)がご利用いただけ、再起動後も衛星補足数含め各種データが維持されているため、スムーズに再飛行いただけます。バッテリーは持ち運び・交換しやすいように取っ手がついており、こちらの取っ手を回す(収納?)ことで機体本体との固定をします。

※この取っ手で”機体”の持ち運びはできないので要注意です。(すっぽ抜けます)
サイズ感としては M350 RTK で使用したTB65バッテリー2個分です。

BS100 スマートバッテリーボックス は3本差しの充電器。

送信機バッテリーのWB37は2本まで充電可能で、急速充電(完全充電まで70分)・静音モード(完全充電まで110分)や、満充電・90%充電などの選択が可能。
送信機は DJI RC Plus 2 Enterprise Enhanced+sub2G増強アンテナ
今回の機体ではMatrice 4シリーズと同様にDJI RC Plus 2 Enterpriseを採用。Enhanced(強化された)という名前がついている通り、後ろには伝送強化用のsub2G増強アンテナが追加されており、伝送距離が12kmから20kmへと拡張されています。(日本仕様の場合)
※M400では、DJI RC Plus送信機やDJI RC Pro Enterprise送信機は対応していません。
※sub2G増強アンテナでの伝送強化はMatrice 4シリーズ、4Dシリーズではご利用いただけません。

より進化した飛行性能と安全性
飛行時間がついにペイロードつけて「59分」に
ペイロードをつけて最大飛行時間がついに59分となりました。さらにRTH(自動帰還)が起動する下限値もバッテリー残量20%→15%に変更されたことで、より長く実運用ができるようになっています。
各ペイロードでの最大飛行時間は、下記の図の通りです。

ペイロード
M400では最大ペイロードが6kgに進化しました。前モデルM350RTKの2.7kgから大幅なアップグレードになります。これによって「複数のモジュールの同時取り付け(4つのE-PORT/理論上最大7つ)」や「3rdパーティ製のモジュールの取り付け(SDK対応)」などができるようになりました。
気になるペイロード(2025/6/10現在)は、以下の通りです。
・DJI Zenmuse L2 (レーザー測量用)
・DJI Zenmuse P1 (空中写真測量用)
・DJI Zenmuse H30T(点検・調査用)
・DJI Zenmuse V1(大音量スピーカー)
・DJI Zenmuse S1(サーチライト)

M350 RTK で対応していた Zenmuse H20シリーズ や Zenmuse L1 は非対応となりますので、ご了承ください。
気になる新機能のご紹介
AR機能の強化
表題の通り、M400で使用する操作アプリ DJI Pilot 2 でAR機能の拡張がされており、主に3つあります。
・ARストリート(現時点では Zenmuse H30T のみ対応)
送信機の画面上で写っている映像に対して地図情報を重ね合わせます。具体的には地図の「道」「建物名」を表示することで、どこまでが敷地なのか、どこを第三者(車・人)が通るのかがわかるのでレベル3.5飛行において非常にうれしい機能となっています。

・AR障害物表示
前方に障害物があった場合には「自動で回避する」+「送信機上でARで回避する飛行経路の表示」を行います。自動回避ができることは嬉しいのですが、やはり「どう避けるか」がわからないと不安、といったこともありますので非常にお役立ちする機能かと思われます。
・AR電線の警告表示
こちらはLiDARセンサーを使用して電線を検知します。検知した電線は分かりやすく送信機上で、ARラインとして”強調して”表示をすることでより安全性を高めます。
・他にもAR機能が盛りだくさん
上記のような機能のほかにも、機能強化といったところで「RTHの際のルート表示」「着陸する場所の表示」「線や面の計測」などといったAR機能が搭載されており、皆様の業務のお役立ちをします。
地形に沿って高度を保つ「リアルタイム地形フォロー」
従来のドローンでは、地形に合わせた高度を維持するため、「1. 事前に飛ばす」「2. 地形データを作成する」「3. データを送信機に入れ込んで飛ばす」といった手間が必要でした。一方で M400 では機体が地上から何mの高さにいるか、といった地形を把握し、その場で高度を調整することが可能です。
この機能は小型ドローン(Mavic 3 Enterprise, Matrice 4E)などではありましたが、新たに M400 でも対応したことで、Zenmuse P1 での写真測量や Zenmuse L2 でのレーザー測量でもご利用いただけるようになりました。
さらに自動航行以外に、手動飛行においても地形フォローが使えるようになっています。オペレーターが地形を意識せずに前進するだけで、機体が自動的に高度を調整してくれるため、操縦負荷の軽減と安全性の向上につながります。
PPP-RTK
M400にはPPP-RTKが搭載されています。これは「高精度単独即位」と呼ばれるもので、電源を入れた状態にしておくと自動的に機体位置(緯度・経度・高さ)の精度が向上していく、というものです。約20分で精度20cm以下まで収束し、送信機画面上で「GNSSS+」と表示されます。
もちろん従来のRTK機能を用いて、DJI D-RTK3マルチステーションやネットワークRTKに接続して、高精度の位置座標を取得しながらの運用も可能です。

船舶での運用
この機体では船舶からの離発着が可能となっています。船での着陸には3m×3mのマーカーを置くことで、それによって自動認識による着陸をします。また、着陸後にはプロペラが不要に回らないようにモーターロックがかかる仕様となっています。

まとめ
Matrice 400 は、業務現場の「今ほしい」をほぼすべて搭載した新世代ドローンです。測量・インフラ点検・災害調査など、さまざまな分野での運用に向けて、信頼性と柔軟性が一段と向上しました。
セキドでは、そんな Matrice 400 の特徴や効果について、実機を使ってよりわかりやすく紹介する無料Webセミナーを6月11日(水)10時より開催いたします(※現在、アーカイブ配信中)。さらなる業務効率化を実現するヒントが見つかる機会ですので、ぜひお気軽にお申し込みください。
6/11(水)セキド主催 DJI Matrice 400 速報Webセミナー
※アーカイブ配信中
6月18日(水)より幕張メッセで開催される「CSPI-EXPO2025 第7回 国際 建設・測量生産性向上展」セキドブース[11-70]では、Matrice 400 と各種ペイロードを含む様々な測量関連製品を展示いたします。カタログスペックだけでなく、発表に先駆けて行ってきた検証内容も併せてお伝えしますので、ぜひご来場ください。
また、横浜市金沢区の セキドDJI 横浜ドローントレーニングセンターを中心に各地で開催する実演会は、ドローン導入を検討中の事業者の方に最適なイベントになっております。ドローンを使った業務効率化に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご参加ください。