Mavic 3 Enterprise の新機能「斜面ルートモード」を解説します
こんにちは、セキド産業用ドローン担当の鈴木です。
今回は DJI Mavic 3 Enterpriseシリーズに追加された新機能である「斜面ルートモード」について解説します。2024年4月7日に Mavic 3 Enterpriseシリーズの大型アップデートがあり、斜面ルートモードを含む様々な便利機能が追加されました。
斜面ルートモードにより、立面飛行が組みやすくなり、立体構造物や法面(のりめん)のデータ取得、3Dモデリングが簡単に行えるようになりますので、ぜひ最後までご覧いただき、業務にお役立てください。
目次はこちら
1. 今回のアップデート内容
2. 自動航行機能「斜面ルートモード」について
3. 斜面ルートのミッション作成方法
4. 活用事例
1. 今回のアップデート内容
まず、斜面ルートモードの本格的な解説の前に、今回のファームウェアアップデートの内容を確認していきましょう。詳細はリンク先をご覧ください。
DJI Mavic 3E/3T Release Notes[PDF]
リリースノートは英語のみの記述ですが、簡単に和訳するとこのようになります。
・自動航行「直線ルート」において、飛行中の高度調整を行うライブミッション録画を追加
・自動航行機能においてのカスタムブレークポイントを追加
・ウェイポイント飛行において「スマート低照度モード」を追加
・ビジョンアシストを追加
・AR RTHルートと、AR 着陸地点を追加
・ライブビュー設定や直線ルートの作成などのUIインタラクションを最適化
今回は「斜面ルートモード」に着目したスペシャルコンテンツですが、そのほかの機能についても解説記事を、後日公開予定です。
2. 自動航行機能「斜面ルートモード」について
機能の概要
建物の壁面や法面などにおいて、均一な撮影ができるようになり、AR機能を用いることで対象物に対しての微調整を行うこともできます。立面飛行を行うメリットとしては、3Dモデルの作成や外壁の点検などで役立つ飛行方法となっています。
ひとことで言うと、AR機能を利用して立面飛行のミッション作成をとても簡単にし、業務を効率化する機能となっています。
「斜面ルートモード」利用のメリット
メリットは以下の通りです。
・ラップ率の自動計算
・次回以降も同じ飛行が可能
従来、構造物や壁面など直立している面に対しての撮影では手動で行うことが主流でした。自動飛行させる場合にはWay Pointで作成することも可能ですが、この方法には難点があり、飛行方法の計算(ラップ率など)は自分たちで行わなければならないため、とても効率的とは言えませんでした。
これまでの方法はこちらの記事で紹介しています。Matrice 300 RTK での
立面飛行ミッションプラン作成方法とは?
3. 斜面ルートのミッション作成方法
ここからは、斜面ルートモードを使った立面飛行ミッションを行う手順をご説明いたします。まずは一連の流れが掴めるように作成した動画をご覧いただいた上で、説明に沿って進めるとわかりやすかと思います。※本機能を使用にはRTKの利用が必須となります。
a. 新規飛行ミッションから[斜面ルート]を選択
b. 対象物を撮影
送信機背面の「C1ボタン」を押して、表示されている画面を撮影します。
※ポイント:写真を撮影する際は、ジンバルを動かさず対象物に対して垂直に撮影するようにしましょう。
c. 飛行範囲の設定
飛行エリアの奥行、X軸、Y軸を変更し、対象物に沿うように設定します。AR機能を用いることにより、実際のパイロット画面で飛行範囲を確認できます。
写真で範囲を指定する際、奥行きが見えづらいため機体を対象物上空まで飛行させ、実際にどのくらい幅が空いているのかを回り込んで確認することを推奨します。
奥行きの確認とマッピングエリアの調整は動画でご確認ください。
d. 自動航行の設定
自動航行の設定項目はこちらの通りです。撮影対象や現地の状況に合わせて設定してください。
[1] マッピングエリアの調整
飛行範囲、奥行き、X軸、Y軸の変更を行うことができます。
[2] GSD(地上画素寸法)
対象物に対して、写真の1ピクセルに対して何cmで撮るかを決めていきます。
※GSDを下げることによって、対象物との距離が近くなるため注意が必要です。
[3] 高度モード
相対離陸地点高度(ALT):機体が離陸した地点を0mの基準とします。
※傾斜ルートの場合、ALTのみとなり変更することはできません。
[4] 傾斜までの距離
対象物までの距離を表しています。
※飛行の安全上、周りの環境に気を付けながら設定します。
[5] 安全離陸高度
自動航行の挙動は、「離陸」⇒「安全離陸高度まで上昇」⇒「撮影をするスタート地点まで横移動して開始」となります。
「安全離陸高度」は離陸地点からどの高さまで飛び上がるかを設定するものとなります。
[6] 速度
速度は自動航行で撮影中に、どのくらいのスピードで移動するかの設定となります。
傾斜ルートの場合、地上との距離が近いためできる限り速度を落として設定しておくことをお勧めいたします。
[7] 飛行ルートの変更
水平、垂直に変更が可能となります。
[垂直の場合の飛行ルート]
[8] 完了
[完了]では、自動航行を終えた後の動作を設定することができます。
[タスクを終了]は自動航行が終了した地点でホバリング、
[Return-to-Home]では自動帰還、[着地]は自動航行が終了した地点に着陸、
[はじめの位置に戻り、ホバリングする]は自動航行での撮影を開始したスタート地点まで戻ってホバリング(空中で停止)を行います。
[9] 詳細設定
詳細設定に移ります。
[10] サイドラップ率
隣接するコースの写真との重複度を設定いたします。
[11] 前部のオーバーラップ率
同一の撮影コースで隣り合う写真の重複度を設定いたします。
[12] 写真モード
[等時間撮影](n秒ごとで写真を撮る)や、[等距離撮影](一定の距離を進むごとに写真を撮る)の設定を行います。
[13] 離陸速度
離陸地点から安全離陸高度へ上昇する際の速度設定となります。
[14] ルートのはじめの位置
飛行ルートの開始地点を変更することができます。
e. 飛行スタート
左上の水色矢印ボタンから自動航行を開始します。
4. 活用事例
今回の立面飛行ミッションデータから、DJI Terra を用いて3Dモデルを構築していきます。
3Dモデルを作成する際、ラップ率(写真の重なり)がとても重要であり、その重なりなどをもとに3Dモデルを作成しています。そのためラップ率の計算を自動で行ってくれる立面飛行ミッションは、誰でも簡単に3Dモデルの完成度を高めてくれる機能となっております。
このように3Dモデルから外壁を確認して、ひび割れなどがあれば点検が必要な場所を瞬時に見つけることができます。3Dモデルからは点群出力も可能であり、他のソフトウェア(トレンドポイントなど)を使用することで点群データの編集や、CADなどに図面として落とし込むことも可能です。
Mavic 3 Enterprise で業務改善するなら
いかかでしたでしょうか?
今までは3Dモデルを作成するとき、手動で行うことが多く、人の感覚でラップ率(写真の重なり)決めていたり、画角を調整していたため、3Dモデルの作成を失敗してしまったりした方もいるのではないでしょうか。
今回の立面飛行ミッションが登場したことにより、撮影の仕方や飛行方法の難しいところが改善され、誰でも簡単に3Dモデルが作成できるようになりました。効率性も段違いで上がっており、本来であれば正確な3Dモデルを作成しようとすると、自分でラップ率や画角、シャッター間隔を計算しなければならなかったため、飛行ルートを作成するだけでも1日以上かかることもありました。
ですが、今回の立面飛行ミッションを使うだけで、今までのような計算は一切不要で5分もあれば飛行ルートの作成ができてしまうぐらい簡単なものになりました。
ぜひ、立面飛行ミッションを使って業務効率upを目指し、Mavic 3 Enterpriseシリーズの導入を検討されてみてはいかがでしょうか?