農業ドローンを使った可変施肥とは?3つのステップを写真と動画で紹介します
こんにちは。セキド農業担当の糸野です。
今回は、皆さまから問合せの多い、農業ドローンを用いた可変施肥について詳しくご紹介してまいりたいと思います。
可変施肥ってどうやるの?
一般的なイメージとして「可変施肥(かへんせひ)」と聞くと、必要な場所に必要な量のみを施肥するものを想像するかと思います。確かにこれが実現できれば、資材費を削減したり、作物の高温障害の発生を未然に防ぐことが可能なため、近年異常気象などにより不安定でギャンブル性が高いと言われる農業において、安定した収益を上げるための強力な味方になってくれます。
ただ、実際に実現しようと思うと「“必要な量” ってどうすればわかるの?」という部分でまずつまずきますし、その後の必要な量をどうやって “散布” するの?という部分に至っては、もはやSFの世界観のようにも感じます。
今回はそんな実現できれば強い味方の可変施肥を実際に実現するためのノウハウをご紹介したいと思います。
可変施肥を実現するためのステップは言葉にすると単純で、
「見える化」、「分かる化」、「できる化」
の3ステップです。
それでは、続けて可変施肥を行うための3ステップについて見ていきましょう。
「見える化」に必要なことは?
第1ステップの見える化については、非常に簡単な手順で実現できます。こちらのページからお申込みいただき、Mavic 3 Multispectral(マビック スリー マルチスペクトル、以下 Mavic 3M)をご購入いただくだけです(w)
セキドでは、農業ドローンをご購入いただいた全てのお客様にご満足いただくため、個別の講習プランをご用意しています。見える化を最も効率的に実施されたいお客様は、ぜひお気軽にお声掛けください。
「分かる化」=「NDVI」ってなに?
閑話休題、簡単な手順で見える化を実施したら、次が問題の「分かる化」です。つまり Mavic 3M を使って取得したデータを分析する必要があり、Mavic 3M では様々な植生指数(簡易的に植物の健康状態を図るための指標)が取得可能です。
その中でも代表的なものは「正規化植生指標/NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)」で、これは以下のような計算式で表されます。
NDVI =「近赤外線」-「赤外線」/「近赤外線」+「赤外線」
要は、近赤外線は一定の反射率で返ってきますが、赤外線は緑にあたると減退する性質を利用し、対象の植物がどのくらい緑でいきいきしているかを判断しようというものです。ちなみに赤外線の代わりに緑色そのものを使うとG(Green)NDVIと呼ばれる植生指数を取得可能です。
ここまで読めばお分かりの通り、NDVIとは端的に言えば人間でいうところのBMI(体重[kg]/身長[m]²)のようなものです。
※7月の某ゴルフ場グリーンにて可変施肥実施前のNVDI画像:
[生育不良を示す青いエリアが多く、均質な生育が理想とされるグリーン上にムラが目立ちます]
「分かる化」の極意は統計にあり!?
健康診断に行って大仰なお金を払って、身長と体重だけ測り「あなたは不健康ですと」診断され処方箋を渡されても、おそらく多くの方は納得できないことでしょう。それと同じように、ただマルチスペクトルカメラを搭載したドローンを使って近赤外線と赤外線の値だけをとって、「この圃場に必要な窒素量は◯◯gです」と言われても多くの生産者様は納得しないはずです。つまり見える化から分かる化に至るまでにはあいだに “統計” が必要なのです。
要は、ある場所で、ある時期に、あるNDVI値の作物に対して、あるグラム数の窒素を投入。結果としてNDVI値がいくつに改善し収量はいくらであった、という統計情報がなければ、ただ見える化をしても正しい「分かる化」には至らないということです。
※可変施肥から1ヶ月後8月の同グリーンのNVDI画像:
[青いエリア減少し、グリーン上はムラのない生育となっています]
タダで使える!?DJI製分かる化ツール
統計情報を得るための分析ツールとして、DJIは無料で使えるWEBアプリケーション「DJI Smart Farm(スマートファーム)」で、簡易的な分析機能を提供してくれています。
普段お使いのDJIアカウントでそのままログインでき、農業ドローンさえ購入すればすぐに使い始めることが可能です。
Smart Farm では以下の機能を視覚的な分かりやすいUIでお使いいただけます。
・散布ドローンへの撮影データの連携による自動航行ミッション作成機能
・散布ドローンのウェイポイントでのミッション作成機能
・NDVI値を元にした施肥量の処方機能
・処方された施肥量を元にした自動航行ミッション生成機能
※NDVI値を元に施肥量を設定するUI
セキドからDJI製農業ドローンを購入いただいたお客様には、納品時講習の際に追加費用一切なしで詳細な使い方をご案内いたします。使い勝手や機能が気になる方はお気軽にお問合せください。
分かる化/できる化の最強ツール Pix4D とは
無料で使える Smart Farm でもある程度の分析や自動航行での可変施肥の設定は行えますが、やはり無料なだけあって細かい機能や利便性に難があります。実際に可変施肥の「分かる化」「できる化」を極めるためにはもう一歩踏み込んだ機能が必要になってきます。
そこで様々なツールを使ってきた糸野が最もお勧めするツールが、「Pix4Dfields(ピックスフォーディーフィールズ)」 です。
本製品では DJI Smart Farm でできる全ての機能が、より高い利便性で使えるだけでなく、夢のようなこれらの機能が追加で用意されています。
・単一箇所やエリアを指定しての平均値の出力機能
・レポート出力機能
・エリアを指定しての施肥量の処方機能
・雑草など非散布領域の自動検出機能
・過去のデータとの比較機能
・管理圃場に対する注釈機能
※エリアを指定した施肥量の処方機能
※表示範囲のスケール変更機能
このように本格的に “統計” を取るために必要なすべての機能が網羅されているため、可変施肥をビジネスにしたい方には特におすすめのツールとなっています。
できる化最強ドローン「DJI AGRAS T25」
2024年1月販売予定の最新のDJI製農業ドローン Agras T25 では、Pix4Dfields などで作成した自動航行ミッションを取り込み、簡単に自動航行による可変施肥を実施することができます。
自動航行での可変施肥を実施するまでのステップを、動画にまとめましたのでご覧ください。
1. 利用したい肥料を使って粒剤キャリブレーションを実施
2. 作成したミッションをSDカード経由で取り込む
3. 自動航行のミッションを実行
ご覧の通り、非常に簡単なステップで実現可能で、事前の準備をしっかり行えば、現場ではボタンを数回押すだけで完璧な自動航行による可変施肥が可能です。もちろん実際の細かい使い方や注意点は、Agras T25 を購入いただいた際に実施する納品時講習の際に、追加料金なしで細部に渡るまでご紹介いたします。農業用ドローンでしかできない効果的な可変施肥をぜひご検討ください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。ここまで可変施肥について、特に「分かる化」の重要性と「見える化」と「できる化」の簡便さについてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?
セキドでは農業ドローンの営業担当が、365日どこでも出張で実演デモや合同での実証実験を実施可能です。この記事をご覧になって少しでも可変施肥にご興味を持たれたら、お気軽にセキドの糸野までお問い合わせください。