サーマルカメラ搭載ドローン「DJI MAVIC 3 THERMAL」の性能を検証しました!
こんにちは、セキド産業用ドローン担当の奥です。
今回は、Mavic 3 Enterpriseシリーズの1台で、「インフラ点検・災害対応ドローン」の Mavic 3 Thermal(マビック 3 サーマル)について実機を用いて、
・サーマルカメラの性能はどんな感じなのか?
といった性能について検証を行いましたので、コンパクトなドローンを使ったインフラ点検や災害対応をご検討中の方に、ぜひ読んでいただきたいと思います!
Mavic 3 Enterpriseシリーズとは
今回のメインである Mavic 3 Thermal を含む、最も手軽なDJI産業用ドローン Mavic 3 Enterpriseシリーズのコンセプトや特徴はこちらです。
・遠くまで確認ができるズーム機能
・見えない情報を可視化する赤外線カメラを搭載(Thermalのみ)
Mavic 3 Enterpriseシリーズの詳細は、すでに公開中のこちらのコンテンツをご覧ください。Mavic 3 Enterpriseシリーズの特徴・機能をまとめました
Mavic 3 Thermalについて
では、さっそくMavic 3 Thermal の実機を見ていきましょう。Mavic 3 Thermal は同梱のハードキャリングケースに収納されており、機体(SDカード挿入済み)・送信機・バッテリー✕1本・USB-C to Cケーブル・USB-C to Aケーブルなどが、購入時の段階で格納されています。ケースには、機体に差し込んだバッテリーを含めて最大7個まで格納することができ、これらの構成は Mavic 3 Enterprise でも同様となっております。
機体のサイズはこれまでの Mavic 3シリーズ と同様のサイズとなっています。
Mavic 3 Thermal のメリット/デメリット
[メリット]
・これまでの産業用ドローン(M300 RTK、M30シリーズ、Phantom 4 RTK)などと比べて、はるかに小型、軽量で持ち運びや取り扱いのしやすい。
・他のドローンでは入ることがリスクとなっていた「狭い隙間」にも比較的入りやすい。
[デメリット]
・小型化に伴い、他の産業用ドローン(耐風性能:15m/s)と比べて、やや風に煽られやすい(Mavic 3 Thermal の耐風性能:12m/s)。
搭載するカメラ
Mavic 3 Thermal には、広角カメラ・望遠カメラ・サーマルカメラの3つのカメラが搭載されています。
望遠カメラ:焦点距離(35mm判換算)162mm、12MP、光学7倍ズーム(最大56倍ハイブリッドズーム)
サーマルカメラ:焦点距離(35mm判換算)9.1mm、解像度640 × 512、空間分解能は1.319 mrad
どのような業務で使用できるのか
Mavic 3 Thermal は「インフラ点検・災害対応モデル」のため、様々な業務シーンでの活躍が見込まれます。特に軽量・コンパクトであることから、従来の産業用ドローンでは大きさ・重さの面で持ち込みづらかった山岳救助など、利用する現場の幅が広くなりました。
具体的には以下のような業務シーンで活躍することが考えられます。
1. 点検業務
・橋梁点検
・外壁点検
・漏水点検
・ソーラーパネル点検 など
2. 災害対応
・災害現場での捜索(人命救助)
・災害現場の状況把握
・山岳救助 など
3. その他
・鳥獣、害獣対策
・夜間業務 など
また、お客様から「Mavic 3 Thermal は測量でも使えるのか?」というお問合せをいただきますが、残念ながら測量での使用は非推奨となります。詳細につきましてはこちらのFAQをご参照ください。
Mavic 3 Thermal の検証:捜索救助の場合
捜索救助を想定し、Mavic 3 Thermal で対象者(要救助者)を見つけやすい距離の検証を行いました。具体的には、対象者に対して Mavic 3 Thermal の距離が水平方向に 20m/40m/60m の際に、飛行高度を 10m/20m/30m/40m/50m とした計15パターンで見え方の検証を行いました。
検証結果
2. スピーカーで救助者へ音で誘導することで発見しやすくなる
検証の結果、Mavic 3 Thermal を使った捜索救助では、上記の特徴が確認できました。それでは実際の撮影データも合わせて詳しく見ていきましよう。
送信機上の画面から捜索することが可能
送信機の画面上からは、可視光・サーマル画像・2画面の3つのモードで状況を確認をすることができます。送信機の画面はスマホを横置きにした程度のサイズとなり、撮影データを拠点に持ち帰らなくても、現場でもしっかりと状況確認をすることができます。
※画面の注視は目視外飛行に該当しますので、運用体制にはお気を付けください。
まず、ドローンを垂直に飛ばした場合、今回の対象者は直立しているため、映す面積が少なく見えづらいことがわかりました。サーマルカメラを用いることで、木の陰にいても体温を検知して浮かび上がっていることがわかります。
一方で、横方向から確認できるよう対象者からある程度離れて撮影した場合では、可視光でもサーマルカメラでも対象者を容易に確認することができました。
※環境・時期によって、サーマルカメラでの見え方は異なります。
スピーカーで救助者へ音で誘導することで発見しやすくなる
Mavic 3 Thermal に限った話ではないですが、カメラの特性上、対象者が茂みや物体の陰に隠れてしまうと検出の難易度があがります。これは可視光カメラだけでなく、サーマルカメラでも「外に露出している表面の温度を検出する」という特性上、同様の弱点となっています。また、対象者に動きがあるかないかでも見つけやすさが変わってきます。
そこでオプションのアクセサリーであるスピーカーを搭載し、
・要救助者は「開けた場所への移動」
・音声が届いているならば「手を振るなどのアピール」
といった呼び掛けを行うことが、発見率を上げるのに効果的な手段となります。
こちらは水平方向に60m離れた場所から撮ったものになります。ある程度の距離が離れていても光学7倍ズームで追加確認もできますので、Mavic 3 Thermal は捜索救助の現場で十分に活躍することができると考えられます。
Mavic 3 Thermal の検証:インフラ点検の場合
続いて Mavic 3 Thermal でソーラーパネル、外壁、屋根点検の3つを対象に、検証を行いました。
検証結果
2. 外壁点検においては細かいクラックなども明確に見ることができる解像度
3. 屋根点検では自動航行を行うことで3Dモデルを作成して確認&納品することができる
検証の結果、Mavic 3 Thermal を使ったインフラ点検では、上記の特徴が確認できました。こちらも実際の撮影データを合わせて詳しく見ていきましよう。
ソーラーパネル点検
今回点検を行ったソーラーパネルは、設置してから2週間ほどのものであったため、異常(ホットスポット)の検出はできませんでした。
新設のソーラーパネルのためホットスポットはなかったものの、ソーラーパネルの裏にある集積装置の発熱の検知をすることに成功し、温度差による見え方について Mavic 3 Thermal は十分に有効だと判断するに足るデータを得ることができました。
外壁点検
次に、施設の外壁点検を行い、どのくらいの精度の3Dモデルが「手動飛行」で作成できるのかを検証しました。作成された縦8m×横3.75mの外壁の3Dモデルがこちらになります。
全体像のモデルでは詳細がわからないため、壁面の一部をズームしたところ、壁面にある凹凸までも精細に再現されていることがわかりました。
屋根点検
屋根点検を想定した検証では、クラックの検出ではなく「自動航行」での3Dモデルの作成精度の確認を行いました。今回はオブリーク撮影を行っていないため、側面などのデータは欠落しているものの、前述の外壁点検での手動飛行とは比較にならない少ない労力で手軽に撮影からモデリング作成を行うことができました。
これにより異常個所を確認した際、「図面にチェックを入れるのではなく3Dモデリングをすることで、どの箇所に問題があるのか」を成果物として出せるようになりました。
Mavic 3 Thermal の導入は
以上の検証結果から、Mavic 3 Thermal はインフラ点検・防災用ドローンとして、業務効率の改善に役立つものだと考えられます。Mavic 3 Thermal を含む産業用ドローンの詳細やお見積りなどの購入相談をご希望のお客様は、問い合わせフォームよりお気軽にご依頼ください。ドローン導入についてのご相談、お電話でのお問い合わせもお待ちしております。
産業用ドローン お問い合わせフォーム
03-5843-7836(月~金 10:00~17:30)
また、セキドでは今回ご紹介した Mavic 3 Thermal などのドローンによるインフラ点検や測量の現場を想定したデモを行う無料実演会、最新事例と撮影データ紹介する無料WEBセミナーなどを定期開催しております。横浜市金沢区の セキド DJI 横浜ドローントレーニングセンターを中心に各地で開催する実演会は、最新モデルによる実際の撮影データを確認することもできる、導入検討中の事業者様に最適なイベントになっておりますので、ドローンを使った業務効率化に興味をお持ちの方は、お気軽にご参加ください。