自動運転車や自律走行ロボットなどで使われるSLAM(スラム)とは?
こんにちは。セキドで産業向け製品を担当する吉田です。
今回は、最先端のロボットや自動運転車、3Dスキャナー、一部のドローンなどに搭載され、周囲の環境を把握して自分の位置を推定するために使われる技術「SLAM(スラム)」をご紹介します。聞き慣れない方も多いかと思うSLAMについて、基本から実用事例まで、できるだけわかりやすく紹介しますので、ぜひ最新技術のウラ側をお楽しみください。
SLAM(スラム)とは
SLAMは、「Simultaneous Localization And Mapping」(自己位置推定と地図作成)の略で、移動するロボットやドローンが未知の環境を探索しながら自身の位置を同時に推定し、その環境の地図を作成するための技術です。
SLAMの身近な活用事例
自動運転技術
SLAMの中で今一番期待されている分野です。リアルタイムで周りの環境や障害物を把握することによって、車線や先行する自動車の位置を捉えて正確に追従することができます。
自動ロボット
清掃ロボットや倉庫ロボットなどがあり、多くの企業やご家庭でも導入されている、最も身近に感じられるSLAM技術だと思います。清掃ロボットはSLAMを活用して室内地図を作成しながら自己位置を把握することで、効率的な清掃と家具や障害物の回避が可能です。
ドローン
ドローンでは、安定した正確な飛行のためにGPSやRTKといった衛星を用いた測位が欠かせませんが、それらが使えない屋内やトンネルなどの環境であっても、位置補正や自動飛行を行うために活用されています。ちなみにDJIの現行ドローンにはSLAMを利用するモデルはありません。
建築、エンジニアリング、メタバース
SLAMは精密なモデリングなどに利用されます。取得したデータをもとに3次元CADやBIMデータ、仮想空間を作成するのに使われています。
拡張現実(AR)および仮想現実(VR)
デバイスの位置と方向を把握して、仮想オブジェクトを現実世界やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に表示するのに役立っています。
SLAMのスキャン方法
SLAMには様々なスキャン方法があり、SLAM搭載機器(ロボットなど)が環境を観測するために使われています。以下に主なSLAMのスキャン方法をご紹介します。
Visual SLAM(ビジュアルスラム)
・単眼カメラ
複数の画像から特徴点を抽出し、これら特徴点を次のフレームにおいて追跡します。単眼カメラでは、エピポーラ幾何や三角測量を使用して、特徴点の3D位置を推定します。
・ステレオカメラ(カメラが複数ある)
ステレオカメラは使った方法では、1つの機器の異なる位置に搭載された複数のカメラ映像を使い、カメラごとの画像間の視差(特徴点のずれ)を計算し、視差マップを作成します。ステレオカメラでも複数のフレームの点群データをバンドル調整によって最適化します。人間の両目の仕組みと一緒です。
LiDAR SLAM(ライダースラム)
・2D LiDAR SLAM
2D LiDAR SLAMは、水平方向にレーザー光線を照射し、反射した光を受信して距離情報を取得します。取得した2D点群データを使って、周囲環境の平面上における障害物や特徴点を地図として構築します。
・3D LiDAR SLAM
3D LiDAR SLAMでは、水平方向と垂直方向にレーザー光線を照射し、360度全方向に対して距離情報を取得します。取得した3D点群データを使って、周囲環境の3D構造をとらえたモデルマップを作成します。
Visual SLAM とLiDAR SLAMの
メリット・デメリット
それぞれのスキャン方法には、次のような特徴とメリット・デメリットがあります。Visual SLAMとLiDAR SLAMを組み合わせることで、お互いのデメリットを補い合う事も可能です。
Visual SLAM
[メリット]
・コストと軽量性
カメラは比較的低コストで軽量なため、搭載が簡単
・情報が豊富
カメラ映像は色情報を含むため、豊富な特徴点やモデル情報を得ることができる
[デメリット]
・深度情報の不足
通常カメラは2D情報しか得られず、深度情報を得るには別途センサーが必要
・光環境への依存
光環境の変化や暗闇など、光環境の影響を受けやすい
LiDAR SLAM
[メリット]
・高精度な距離情報
レーザーにより高精度で距離情報を取得するため、3D構造を正確に取得することが可能
また、葉などであればレーザーが透過してその先の物を測定することもできる
・周囲の光環境の影響を受けない。
レーザーを照射して情報を取得するので、暗所でも高精度なデータが取得可能
・広範囲の利用
室内外の広範囲な環境で利用可能で、写真などで特徴点が得づらい状況でも利用できる
[デメリット]
・コストと重量
一般的にLiDARは高価で、一部のLiDARは重い
・色情報
レーザーを照射して距離を測っているため、色情報がない
・透明な物体や鏡に対して
レーザーを照射するため、透明なものや鏡は検知が難しい
LiDAR SLAMの実例
複数のSLAMの中でも最も高度な技術で、SF映画のような印象的な映像で周囲の環境を捉えるのが、3D LiDAR SLAMです。セキドで取り扱う3Dスキャナーを使用して、実際に建物の周りや室内をスキャンしたデータがこちらです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
SLAMはすでに私たちの生活に数多く使われており、これから先も確実に活用が広がる技術です。今回ご紹介したように、SLAMにはそれぞれにメリット・デメリットを持った複数の方法がありますが、利用される機器や目的により、使い分けや組み合わせが選択されています。様々な分野で活用されるSLAM技術について、今後もより詳しい内容やSLAMを搭載した製品に関するコンテンツを公開していきますので、楽しみにお待ちください。
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