赤外線カメラ搭載ドローンを利用した外壁点検について
こんにちはセキドの平井です。
今回は、名古屋を拠点に全国規模で建物診断や赤外線調査を専門に行っている「株式会社 貴船インスペクション」様にご協力いただき、ドローンを利用した建物の外壁調査案件に同行させていただいた様子をご紹介いたします。その際に使用した赤外線カメラ搭載ドローンの性能や使用感を比較してみたいと思いますので、ぜひご覧ください。
赤外線カメラで行う外壁点検とは?
現在、建築基準法では竣工から10年が経過した建築物は打診や赤外線カメラでの外壁調査が義務付けられています。
外壁点検を赤外線カメラで調査を行うメリットとして、
・打診調査と比較して短時間で調査を行う事ができる。
・外壁の浮き剥離やコンクリートの漏水などを赤外線画像で可視化できる。
といったことが挙げられます。
さらに赤外線カメラを搭載したドローンを利用することによって、足場やゴンドラの設置が必要無く、通常20~30日程度かかる調査が約2日で完了するのため、大幅にコスト削減が可能です。
また、足場やゴンドラの運用が難しい現場では、これまで地上から上方の検査対象にカメラを向けて撮影を行いました。その際、高層階になるほどカメラを見上げる角度(あおり)が大きくなり、精度が低下していました。
それに対してドローンを利用することにより、常に撮影対象に水平に保ったまま撮影する事ができるので、高層階でも精度を保ったままデータを取得することが可能になりました。
ドローン外壁点検に使用した機材
DJI Mavic 2 Enterprise Advanced + RTKモジュール
折りたたみ可能なコンパクトな機体に高解像度のサーマルカメラとビジョンカメラを搭載した DJI Mavic 2 Enterprise Advanced(M2EA) は、最大32倍のデジタルズームに対応し、オプションのRTKモジュールによってcmレベルの測位精度を実現します。
DJI Mavic 2 Enterprise Advanced 詳細
最大56倍デジタルズーム&広角カメラ/サーマルカメラ搭載の業務用最新モデル
DJI Matrice 300 RTK + Zenmuse H20T + CSMレーダー
DJIの最新型業務用ドローン Matrice 300 RTK は、現代の航空システムから着想を得て設計されました。最大飛行時間55分、最先端のAI性能、6方向検知&測位技術といった機能を多数搭載し、高いパフォーマンス性と抜群の信頼性に知性が加わった新しい業界標準となるドローンです。搭載した Zenmuse H20T は赤外線サーマルカメラに加えて23倍光学ズームカメラ、24mm広角カメラ、レーザー距離計を備えたハイブリッドカメラです。今回はさらに安全性を確保するため、最大30mの検知範囲を持つCSM(円形走査ミリ波)レーダーを追加しています。
DJI Thermal Analysis Tool
Mavic 2 Enterprise Advanced と Zenmuse H20T に対応した、熱画像を分析・処理する専用ソフトです。
DJI Thermal Analysis Tool ダウンロード
対象の撮影距離について
赤外線カメラを利用した外壁調査には適切な撮影距離があります。対象からカメラの距離が近いほどより高精度の画像を得ることができるのですが、近すぎると後々解析を行った際にどの場所を見ているのかが分からないという事が起きます。逆に離れすぎると検出の精度が落ちますので、適度に距離を保った状態で撮影を行う必要があります。
この適切な距離は赤外線カメラのスペックによって異なり、同一スペックであればカメラの焦点距離が長いほど遠方の対象物をより正確に捉えることができます。
そこで目安になるのが「空間分解能」という数値です。「空間分解能」とはカメラセンサーの1ピクセルが瞬間的に捉える事ができる視野の単位になります。この空間分解能が小さくなるほど、より鮮明・詳細に記録する事ができます。
DJI Mavic 2 Enterprise Advanced の場合、空間分解能は約1.334mradとなります。これは1m離れた場所から対象を撮影した場合、センサー1ピクセルあたりに記録できる範囲が約1.3mmとなります。10m離れて撮影した場合は13.3mm、20mm離れて撮影した場合は26.6mmとなります。
次に Zenmuse H20T の場合を見ていきます。空間分解能は約0.889mradとなり、10m離れた場合はセンサー1ピクセルに対して約8.9mm、20m離れた場合は約17.7mmとなります。
では実際に調査を行う場合、対象物からどの程度の距離から撮影を行えばいいのでしょうか。現在、国が定める方針では、画像1ピクセルに対して25mm角以内に収めなさいという基準があります。それを満たすためには、M2EA は対象から約18.74m、H20T では約28.12mの距離から撮影を行えば、センサー1ピクセルに対して25mm角以内に抑えられることになります。
この様に、どの程度の浮き剥離を検出したいかによって撮影距離が決まってくるのが分かります。検出したい浮き剥離の大きさをカメラセンサーの1ピクセル以内に抑えると、正確に判別する事ができるという訳です。
撮影画像の解析
Mavic 2 Enterprise Advanced と Zenmuse H20T で撮影したサーマル画像は1ピクセル毎に温度情報を記録している為、DJI専用の解析ツール「DJI Thermal Analysis Tool」にて解析を行う事ができます。
DJI Thermal Analysis Tool のダウンロードはコチラ
※2021年6月現在 弊社が確認している限り上記のソフトでのみ解析が可能となっています。
Mavic 2 Enterprise Advanced 撮影画像
Zenmuse H20T 撮影画像
いかがでしょうか。こちらの2機種は焦点距離が異なりますので、同一の画角になるように調整して撮影してみました。上記で挙げたようにカメラスペックが同等の場合、焦点距離が大きくなる程、対象物から離れても鮮明に撮影をする事ができます。
Mavic 2 Enterprise Advanced で対象物から18m地点で撮影した画像が、Zenmuse H20T だと28m地点で撮影した画像と同一の画角となるため、より安全を保って撮影を行う事ができます。さらに Zenmuse H20T の場合、カメラにレーザー距離計が内蔵されているので、常に対象との距離を正確に保って飛行でき、より精度を保ってデータを記録することができます。
この様に飛行する現場や使用用途によって利用する機材が変わってきますので、今回の記事が皆様の機材選定の参考になればと思います。
ドローンの業務利用について知りたい方は
セキドでは、今回ご紹介した外壁点検以外にも様々な用途で業務利用されるドローンについてご紹介する無料WEBセミナーや体験会を開催しています。まずはドローンでどんな業務ができるのか?そんな疑問を解消していただくため、ぜひお気軽にご参加ください。
赤外線カメラを搭載したドローンを使った外壁点検をご検討中の方や、コストや精度を確認したい方、実際に撮影したサンプルデータが欲しい方は、ぜひ下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。
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