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本記事では、2025年度の狩猟期間(2025/11/15~2026/2/15)において、赤外線カメラを搭載した産業用ドローン「DJI Matrice 400+Zenmuse H30T」を実際の狩猟現場(巻狩り)で運用し、その有効性を検証した結果を報告します。

はじめに|検証の背景

私はセキドで産業用ドローンを担当すると同時に、第一種狩猟免許を所持し、猟期には実際に狩猟を行っています。この記事は、巻狩り参加者である筆者自身が、実猟でのドローン運用結果をもとにまとめた内容です。
※本検証は、関係法令・安全配慮を遵守した上で実施しています。

結論|赤外線ドローンで獣の発見は十分可能

結論から言うと、赤外線カメラ搭載ドローンを使うことで、狩猟における鹿等の動物の発見が十分に可能であることが確認できました。今期の運用(フライト7日間)では10回以上、鹿を赤外線映像で明確に捕捉しています。

赤外線ドローンとドローン運用管理用クラウドプラットフォームのFlightHub 2を組み合わせることで、動物の発見だけでなく、メンバー間の情報共有や獲物を追う「勢子(せこ)」への指示といった、巻狩り全体の精度向上が期待できます。

使用機材と評価

DJI Matrice 400+Zenmuse H30T

Infrared-Drones-in-Hunting_03

・飛行時間が長く、捜索に余裕がある 
・赤外線解像度が高く、鹿の体温反応を明確に識別可能
・ズーム倍率が高く、安全な高度を保ったまま確認できる
・伝送距離が優秀で、山間部でも広範囲の運用が可能
 ※完全に山に遮られる環境では伝送が困難なため、離陸ポイントの選定は重要です。

Zenmuse H30Tについて紹介した記事はこちらZenmuse H30T 記事一覧

DJI Matrice 4T

Infrared-Drones-in-Hunting_04

Matrice 400ほどの飛行時間や伝送距離の余裕はないものの、Matrice 4Tでも狩猟用途として十分に使用可能でした。機動力と展開の速さを重視する運用では現実的な選択肢といえます。勢子に追われた獲物を待ち受けて仕留める役割の「立間(たつま)」でも運用でき、機動力は非常に高いです。

Matrice 4Tの特長はこちらの記事をご覧ください。DJI Matrice 4シリーズ発表!
フラッグシップ級の小型業務用ドローンを詳しく解説!

赤外線カメラの特性と限界

赤外線カメラは物体の「表面温度」を計測するセンサーです。そのため、常緑樹の下、藪が密集している場所、地形に遮蔽された位置にいる個体は検知できない場合があります。

発見しやすい条件|冬場の落葉広葉樹エリア

気温が低く地表面と獣の温度差があり、広葉樹が落葉している環境では、鹿の体温が背景から明確に浮かび上がり、容易に発見・識別が可能でした。特に勢子に追われた鹿などは簡単に見つける事ができます。

巻狩りでは獲物と勢子の位置情報の共有が重要で、どの方向に動いたかを立間へ連絡することで、獲物の抜けを防ぐことができます。

状況共有のためのFlightHub 2

ドローンを飛行させて動物を発見したら、ズームカメラ等を用いて狩猟鳥獣かを確認します。もしくは、勢子や犬が反応したポイントを無線で共有してもらい、その方向に飛ばして捜索を行います。発見した動物が狩猟鳥獣であった場合は、そのポイントやどの方向に移動しているかを立間に伝えるため、あらかじめFlightHub 2を使用し、事前に立間のポイントや獣道などの場所、勢子の配置場所にピンを設定しました。これにより、飛行中でも送信機画面上で位置関係を把握することが可能です。また、離着陸場所からの具体的な捜索ルート等も3Dで確認する事が可能になりました。

なお、この機能はFlightHub 2無料版で使用でき、本検証においてFlightHub 2の有料部分は使用していません。

ドローンからの映像で鹿の動きを目視しながら、無線で立間に正確な位置情報を共有し、勢子に対して『鹿か猪か、何の動物がいるのか』『動物がどの方向に動いてくるか』を具体的に指示することができました。

(弊社春日部施設での再現画像。左が機体カメラ映像、右が送信機マップ画面)

撮影映像について

実際に撮影された鹿の様子・周囲の様子です。

Q&A

Q1.なぜ狩猟にドローンを使ったのか?
A1.狩猟の効率化というより、安全性の向上と状況把握が目的です。巻狩りでは人と獣の位置関係が重要ですが、地上だけでは全体像を把握しにくい場面があります。ドローンを使うことで、上空から広域を俯瞰し、より安全で無理のない判断が可能になります。
Q2.実際に獣は見つかるのか?
A2.条件付きではありますが、実際に10回以上鹿を明確に捕捉しました。特に冬場の落葉した広葉樹エリアでは、非常に高い効果を発揮しました。
Q3.ドローンの音で鹿は動かない?
A3.今回の検証では、ドローンの羽音が直接の原因で逃げる様子は確認されていません。鹿の近くでホバリングさせた際も動く気配はありませんでした。少なくとも「ドローンの音=即逃げる」という単純な関係ではないと感じています。
Q4.法令面での問題は?
A4.航空法・小型無人機等飛行禁止法・各自治体の条例を確認し、関係法令を遵守した範囲で運用しています。狩猟行為そのものをドローンで行うわけではなく、あくまで「状況把握・捜索・情報共有」を目的としています。
Q5.災害対応や有害鳥獣対策にも応用できる?
A5.FlightHub 2を利用した「地形把握」「位置共有」「関係者への指示」「映像共有(FlightHub 2有料版)」は、行方不明者の捜索や被害個体の位置特定などにも応用可能です。
Q6.高価な機体じゃないと無理では?
A6.Matrice400+ZenmuseH30Tの高性能な機体のほうが余裕はありますがMatrice 4Tでも実用レベルです。大切なのは機体よりも、季節・植生・地形といった、各猟隊の現場を理解した使い方です。
Q7.木の下にいる鹿も見える?
A7.見えません。赤外線カメラは「物体表面の温度」を見るため、常緑樹や藪の下にいる個体は検知できません。万能ではない点は、事前に理解しておく必要があります。
Q8.巻狩りの邪魔にならない?
A8.そもそも、邪魔になる使い方は避けるべきであり、ドローンは前に出すものではなく、上から状況を確認する補助役です。FlightHub 2を使うことで、無線で必要な情報だけを共有できます。また、今回の検証では、勢子や犬がドローンによって混乱する様子は確認されませんでした。巻狩りの影響にならないように高度・距離・飛行位置には配慮が必要です。
Q9.操作は難しい?
A9.基本操作自体は難しくありませんが、狩猟現場で使うには「地形理解・無線連携・判断力」が重要になります。「飛ばせる」より「どう使うか」が大切だと感じました。
Q10.ドローンで狩猟効率が上がりすぎるのでは?
A10.乱獲や過度な効率化を目的とするものではなく、巻狩りの安全性と情報の正確性を重視しています。勢子・犬の無理な動きを減らし、滑落などの事故リスクを下げることが目的です。
Q11.誰でも真似していいの?
A11.    狩猟経験とドローン運用の知識、両方があって初めて効果を発揮すると感じています。誰でも簡単にできるものではありませんが、経験があれば導入のハードルは高くありません。

その他にもドローンの活用についてご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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撮影協力

本検証および映像撮影にあたり、神奈川県猟友会、一般社団法人WILD HARVEST WORKSにご協力いただきました。ありがとうございました。

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