ドローン3機で計2トン!DJI FlyCart 30 で土砂災害対策の資材を安全かつ効率的に輸送しました
初めまして。物流ドローン営業担当の金子です。
本記事では、滋賀県米原市の土砂災害現場にて運搬ドローン DJI FlyCart 30 を使って資材運搬を行った際のレポートをお伝えします。現場では私も実際に災害現場の登山を行い、土砂崩れの威力や災害後の険しさ、運搬ドローンの利便さなどの体験談も踏まえながらまとめています。ぜひ最後までご覧ください。
土砂災害対策としてドローンで資材を運搬
滋賀県の販売代理店 東洋エンジニア株式会社(以下、東洋エンジニア)の協力のもと行った今回の運搬業務ですが、まずは災害現場の状況を確認いたします。
続けて発生した土砂災害
7/1に米原市で起きた豪雨による土砂崩れにより、自治体から警戒レベル5・緊急安全確保情報が発令されました。避難を続ける方もいる中、泥のかき出しが終わった頃の7/25に再び土砂が流れ込み、短いスパンで土砂災害が再発しました。当時の様子はニュースになっています。
土砂崩れが起きた一つの要因として、地球温暖化により鹿の越冬が可能になったことがあります。その影響で鹿の数が増え、植林した苗木を食べてしまうことで地面が裸地化(らちか)し、集中豪雨に耐えることができず土砂崩れに至ったといわれています。
米原市では伊吹山植生プロジェクトの一環として鹿による食害を防ぐため、森林組合による鹿が出入りできないような柵やわなの設置などの対策を行っていましたが、今回の連続土砂崩れにより対策を緊急で強化しなければならない事態になりました。そこでドローンを使って、計約2tの資材運搬を行うことになりました。
ドローン3台を併用した資材運搬
今回の運搬業務は、東洋エンジニアが森飛15、米原市が森飛25(共にマゼックス製)、セキドが FlyCart 30 の3台を使って行いました。3台とも2パイロットでのフライトでしたが、FlyCart 30 は離着陸と荷物の上げ下ろし以外は自動飛行が可能なため、荷下ろしを行う山側のオペレーションはほぼありませんでした。
災害現場での物資輸送
私は資材を受け取る側のポジションにアサインされたため、実際に土砂崩れが起きた斜面から山を登りました。登山ルートは山道が土砂で流されており、掴まる物も何もない道なき道です。
従来のドローンを使わない方法ではこの道を「資材を担いで」登り、荒れた斜面で作業まで行っていたそうです。山登りの経験がない私は「このままではいつか事故が起きる」と素直に感じました。
目的地に到着し準備が済んだら、フライト開始。私達が登山中に荷物を送る側のスタッフたちは機体や荷物の準備を行っていました。荷下ろしポイントは雲の上にもなる高所ですが、FlyCart 30 は難なく荷物を運んできてくれました。
担いで運ぶはずだった資材が、ものすごく早いペースで到着します。そして FlyCart 30 はウインチ操作により着陸することなく荷下ろし可能です。
着陸する必要がないため、このような斜面でも荷物を下ろす事が可能です。到着した黒い荷物は、鹿が植物を荒らさないように斜面にかけるネットのようなもの。1束3.7kgを6本(総重量20kgオーバー)まとめて運搬して、ひたすらにピストン輸送。FlyCart 30 含む2台体制で離陸地点にあった2tの資材が荷下ろしポイントまで全て運搬できました。
ライブミッション機能による自動飛行で運搬
今回の FlyCart 30 のオペレーションは、ライブミッションという機能を使い、運搬ルートを現場で作成しました。ルート作成後は、「荷物取り付け → 自動飛行ルート開始 → 機体が荷下ろし場に到着 → ウインチ操作 → RTH → 着陸 → 荷物取り付け」を繰り返し行いました。基本的にウインチ操作以外の操作はすることがなく、ほかの機体との調整時少し操作を行った程度です。そのため、足場の悪い受け手側はかなり作業がしやすかったです。斜面で荷物を受け取る時は、荷物が実際に着地する場所にも気を配る必要がありますが、ベストな位置を見つけた後は、その場所に繰り返し荷物が到着してくれます。この安心感は FlyCart 30 だからこそ実現できたことだと思います。
同じ荷物を運搬していた森飛は手動操作で飛行を行い、作業中はずっと操作を行わなければならないため、毎回同じ場所というのは難しく、受け取る側が左右に移動する必要性が出てきます。森飛を飛行していた米原市の方には、半自動で行えることを羨ましく言われました。
計2トンの資材運搬業務を終えて
この記事で私が皆さまにお伝えしたいのは「安全」についてです。想像してください、写真にある黒い束を担ぎながら、道にもならない道を上まで運び入れ、作業が終わったら、そこから疲れた体で同じ道を下山しなければならないのです。ハイリスクな作業だと私は思います。
そして、日頃から対策していただいている方々からすると、今回私達がお手伝いできたのは数ある工程の一部です。しかしそこには「リスクを冒して荷を担いで登山する人数を大幅に軽減できたこと」「従来の方法より効率よく運搬作業が進んだこと」「日陰もない斜面の作業員に冷たい飲み物と昼食が数分で届いたこと(私も受け取りましたが感動します)」「何よりけが人が1人も出なかったこと」がありました。ドローンを使って得られたこれらのことが、災害対策の手助けとなっていれば幸いです。
現場で指揮を取っていただいた東洋エンジニアの方々、サポートしてくれた米原市役所と森林組合の皆さま、ご協力ありがとうございました。1日も早く、伊吹山が復興することを願っております。
様々な現場にある辛い作業が最新のテクノロジーを使って安全かつ効率的になるよう、皆さまにもぜひドローンの有効活用をご検討いただきければと思います。セキドでは運搬ドローンのほか、測量や点検、調査、捜索、農業などあらゆる現場でのドローンのメリットをお伝えする無料セミナー・実演会を開催していますので、ご興味をお持ちいただいた方はぜひお気軽にお申し込みください。
運搬性能や活用事例などのお問い合わせや、実演会やデモフライトの要請などもお待ちしております。
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